『ソードアート・オンライン』【A-80】
『ソードアート・オンライン』(Sword Art Online、略称:SAO)
おススメ 【A-】
話数:全25話
今までに見た回数:2回
制作年:2012年7月 - 12月
ジャンル:SF・ファンタジー・アクション・バトル・恋愛
1. 設定(世界観) |
8 |
2. ストーリー展開 |
7 |
3. 登場人物設定 |
7 |
4. キャラデザイン |
9 |
5. 作画(背景/美術) |
9 |
6. 演出(アクション) |
8 |
7. 声優 |
8 |
8. 音楽(OP/ED) |
9 |
9. 音楽(BGM/劇伴) |
7 |
10. その他アニメなりのリアル |
8 |
合計 |
80 |
ストーリー
第1章。2022年、とある大手電子機器メーカーが仮想空間への接続機器《ナーヴギア》を開発したことで、世界は遂に完全なるバーチャルリアリティを実現させた。このナーヴギア対応の初のVRMMORPG《ソードアート・オンライン (SAO)》は大人気の内に完売し、接続した1万人のユーザーがその世界を楽しむはずだった。
しかし、SAOへダイブした少年「キリト」こと桐ヶ谷和人をはじめプレイヤーたちは、ゲームマスター (GM) から恐るべき託宣を聞かされる。SAOからの自発的ログアウトは不可能であること、SAOの舞台《浮遊城アインクラッド》の最上部第100層のボスを倒してゲームをクリアすることだけがこの世界から脱出する唯一の方法であること、そしてこの世界で死亡した場合は現実世界のプレイヤー自身が本当に死亡するということを。
ゲームクリアのためにプレイヤーたちは動き出すが、モンスター戦の敗北や現状に絶望した者たちによる自殺などにより、開始から1か月で2000人が死亡。ゲーム攻略は困難を極めた。
そして2年後。アインクラッドの最前線は74層、プレイヤーの数は6000人ほどにまで減っていた。
Wikiより
撮りだめ派の私には珍しく毎週放送を追っかけながら観たアニメです。それでいて最終話前に一気に24話分見直しました。いろいろと評価に悩むところがありましたが終わってみれば結果よし!という評価になった。
ヴァーチャルオンラインゲームでの死が「リアルの死」に直結するという設定は非常に面白かった。過去にも似たような作品は観ているのだが、こんなにワクワクしながら魅せてくれた1話は久しぶり。
特に序盤の数話はかなりの高評価です。ただ途中から徐々に雰囲気が変わり始め、違う作品を観ているような気分になる展開もあり、一番面白かった設定もどこ行った!?な前半の終幕と後半の展開は序盤ほどのワクワクは無くなっていた。それでも「面白い」という水準で観ることができこともあり、最終話まで観れば一つの作品として満足できる仕上がりだった。と思うことにした。
内容はアニメ好きというよりも案外ゲーム(RPG)好きの方が楽しめそう。予備知識としてオンラインゲーム経験者の方が楽しめると言った方が正しいか。作中ではオンラインゲーム特有の設定の話が出てくるのだが、説明不足もありこの辺の知識有る無しで作中のちょっとした話から大事な話まで理解できたりできなかったりするので面白さに差がついてしまう。
ストーリーはリアルの人間数千人がファンタジー世界で「リアルの死」と隣り合わせに冒険するというこれ以上に特殊なものではないため、飽きが来ないようにするためかストーリー展開中に、作品の見どころをコロコロと変えてくる。視聴している途中にこっちが観方を適応させないといけないポイントがいくつかあるのが大きな欠点。ゲームなのにリアルでもあるファンタジーな世界観を楽しんでいると突然恋愛方面へ話はスイッチし、またそれも現実世界のように親も学校も無い世界なので恥ずかしいくらいの自由な恋愛を見せつけられ、ちょっと合わないと感じる人も多そう。
展開も序盤がものすごく飛ばしすぎていたくらいテンポがよかったので、中盤以降はダラリと感じてしまう。この回の話いるか?と思う話もあったが、全て後半の話には必要なものだったので結果よしということに。というか構成上仕方ないのか。その他にも細かいところまで観ていくと突っ込みどころ満載の話や設定があり、頭が固くなってしまうと途端につまらないと感じてしまうので面白いと感じる部分を柔軟に変化させて観ましょう(笑)
キャラクターは一貫性が無い人物が多く、正直特別感情移入するようなキャラはいなかったが、主人公が徐々に強くなっていくというファンタジーにありきたりで単純なものでなく、ゲームらしい反則的強さという面では楽しみ方を変えてくれたということで評価したい。また、主人公がソロプレイヤーにこだわるところや、それに反し彼の強さに人が集まってくるところは設定を活かしておりなかなか面白い。後半に入ってからもその辺のバランスはうまく引き継がれていたので安心して楽しむことができる。
ただ、まだまだ子供な主人公が俺無敵!モテモテな状態が面白くないと思う人には非常につまらない主人公である。
作画は安定していたが演出面ではちょっとバトルシーンは物足りない面も。ヒロインに対するあざとい演出も気になった。声優さんは前半、後半の敵役が非常にいい仕事していたので高評価。後半に関しては子安さんの演技が本当にいい仕事で盛り上げてくれました。
音楽は1期OPと劇伴のメインテーマが非常によかった。最終回に1期OPのチョイスも非常に良かった。本当に1話と最終回がダントツに面白いという不思議なアニメでした。
最後に、私は某オンラインゲームで最先端プレイヤーとして楽しんだこともあるし、オンラインゲームで知り合った人と恋愛経験もあるのでそういった意味でも最高に楽しめる側だったかと。原作ではまだ続きがあることに加え、相当円盤の売り上げが良さそうなので2期が期待できそうですが、綺麗に終われているしこのまま続けて面白いのかどうかは気になるところ。
年末年始は原作の小説で続きを読んでみたいと思います。
『とらドラ!』【A-80】
『とらドラ!』
おススメ 【A】
話数:全25話
今までに見た回数:2回
制作年:2008年10月 -2009年3月
ジャンル:学園・青春・ラブコメ
1. 設定(世界観) |
6 |
2. ストーリー展開 |
8 |
3. 登場人物設定 |
9 |
4. キャラデザイン |
8 |
5. 作画(背景/美術) |
8 |
6. 演出(アクション) |
9 |
7. 声優 |
8 |
8. 音楽(OP/ED) |
8 |
9. 音楽(BGM/劇伴) |
7 |
10. その他いろんな愛のカタチ |
9 |
合計 |
80 |
ストーリー
その目つきの鋭さのため、不良に見られてしまうことを気にしている高須竜児は、高校2年に進級し、以前から好意を寄せていた櫛枝実乃梨や、親友である北村祐作と同じクラスになることができた。一方で、新しいクラスメイトの間にはびこる「高須は不良」という誤解を、また最初から解かねばならないことが憂鬱であったが、実乃梨の親友で「手乗りタイガー」こと逢坂大河との出会いにより、意外に早くその誤解は解かれることとなる。
Wikiより
目つきのするどい顔ゆえに恐れられている「高須竜児」とキレやすい凶暴な性格ゆえに恐れられている「逢坂大河」の学園ラブコメ。ラブコメとはいってもシリアスな話が後半につれて多くなり、最終的にはコメディ要素は薄くなる。
見えない「愛」を見ようと高校生たちがもがく青春ストーリーが見どころで、それぞれに正直になれないキャラクター同士の衝突を中心に描かれている。
分かり合いたいのに自分のことすら分からない。不器用すぎるキャラクター達は青春の中で恋をして、愛を知る。物語は結末を予想できる内容だったが、最後まで彼らの心情の変化を中心に観る事ができる。
総合的には文句なしにいい作品でした。今回のレビューにあたり再視聴しましたが、2度目でも面白いと感じることができ一気に鑑賞できる魅力。特別なファンタジーやSF要素も無く、エロ描写も無い作品でありながら、普通の学園のみという素材とシンプルな設定でもテンポよく繰り広げ、キャラの心情変化と次を期待させるストーリー展開はうまく出来ていた。
ただ、終盤の二話は一気に駆け抜けてしまい釈然としない気持ちが残ってしまう結果に。それまでにあったストーリーで省いてもよさそうなものもあったのでもう少し最後に余裕がほしかったところ。というのもこの作品の根底にある、恋の悩みの先に現れた「家庭」という悩み。終盤では主人公たちが自ら「大人」へと急成長を図ることで幸福な「家庭」を作ることを目指し、ヒロインが主人公を信じて母親との同居を選んで終わるところは単純な学園恋愛アニメとは違った印象を受けました。(私としては、ヒロインは母ではなく父との同居という最後だともっと高評価だったのですが)
しかしこの辺の重要な描写があっけなさすぎて伝わりきっていないと感じたことと、主人公の進路が曖昧なままだったので、彼の成長という側面も含めると作品としてしっかり締めてほしかった。本当に最後次第で評価がもっとよくなっただけに少し残念なところだ。
登場人物に関しては全体的にメインの女性陣が暴力的すぎます(笑) そして女の内側まで結構リアルに描写するのでドロドロした印象も。この生々しさが苦手な人もいそうで評価が分かれるところですが、少女マンガのような印象もあるので女性にもおススメしやすいポイントでもあります。
個人的にはサブヒロインの「亜美」に関して少し不満あり。4人のバランスに介入する形で途中出場しておきながらも、自身は後ろに下がる形で中立という立場をとり、最終的には彼らの起爆剤へと甘んじるわけですが、これが「大人を演じる」彼女らしかったととるか、主人公から指摘を受けた「子供な一面」で踏み込んでこなかったのが残念ととるかで印象が変わる。結果グチャグチャなりすぎていないので物語としては正解なのですが私としては彼女が期待していた以上の動きが無かったのが物足りなかった。
作画は乱れがところどころあったものの、セリフ以上に感情を表現している描写も多く、大事なところではしっかりとした存在感。セリフが言い回しなどちょっとストレートでない箇所もあった分絵が語る魅力がありました(演出点にしました)。
恋愛ものとしてしっかり完結させた作品で観終わった後に気持ち悪さも残らない、内容もいろんな人におススメしやすい作品です。
『坂道のアポロン』【A-81】
『坂道のアポロン』(さかみちのアポロン)
おススメ 【A-81】
話数:全12話
今までに見た回数:1回
制作年:2012年4月 - 6月
ジャンル:音楽・青春・学園
1. 設定(世界観) |
7 |
2. ストーリー展開 |
7 |
3. 登場人物設定 |
7 |
4. キャラデザイン |
7 |
5. 作画(背景/美術) |
8 |
6. 演出(アクション) |
8 |
7. 声優 |
8 |
8. 音楽(OP/ED) |
9 |
9. 音楽(BGM/劇伴) |
10 |
10. その他 JAZZ |
10 |
合計 |
81 |
ストーリー
1966年初夏、船乗りの父親の仕事の都合で、横須賀から長崎県の佐世保市にある佐世保東高校に転校してきた男子高校生・西見薫。
転校初日、バンカラな男・川渕千太郎との出会いをきっかけに、ジャズの魅力にはまり、薫の高校生活は思わぬ方向へ変化していく。
更に、薫は千太郎の幼馴染・迎律子に、律子は千太郎に、千太郎は上級生の深堀百合香にと、それぞれの恋の行方も複雑になっていく。
Wikiより
月刊フラワーズで連載された小玉ユキのマンガが原作。主人公の男子高校生「西見薫」が転校し、そこで出会った「川渕千太郎」の影響でジャズにはまり、のめり込んでいく姿を描いた青春音楽アニメ。 音と映像がシンクロした演奏シーンが見どころで、音楽は「菅野よう子」さんがプロデュース。
特に見どころの主人公たちが演奏するジャズシーンは、実在の若手演奏者の協力で実現。
「薫」と「千太郎」の演奏シーンの音源収録する際に、実際に演奏する若手演奏者2人を様々なアングルから同時撮影しカメラにおさめ、この映像をベースに作画が行われているためリアリティのある演奏シーンができている。 音楽も演奏シーンもジャズファンからも好評を得ているということも納得である。
それでいてもちろん音楽だけではない。少し特徴のあるキャラクターデザインと作画だが、1966年が舞台であることをしっかり感じさせてくれ、世界観に入り込みやすい。
ストーリーも主人公と同時にジャズにはまり、のめり込んでいけるペース配分で観やすい。
また、キャラクター・声優さんの演技もよく、博多弁なまりがまた作品を支える。ヒロインの「迎律子」は本当に純粋でかわいらしく、主人公が彼女に惹かれていくのにも感情移入しやすかった。
さらに最近のアニメに多い、何もしていないのにモテる主人公とは違い、一途で、努力しながら彼女を想う主人公とその展開が逆に新鮮に感じた。
よくできたストーリーやキャラのおかげで感情移入しやすかったのか、主人公たちが音楽を楽しむシーンではこっちも楽しくなれる。
ジャズともう一つの大きなストーリーの要素、恋愛の話はドロドロで、後半になるにつれて結構複雑になっていくが、ジャズという音楽の要素のおかげで爽やかな雰囲気を保ててはいた。
恋愛の話以外でも複雑な家庭環境の話や昭和の話らしく学生運動の話などの要素があったりするのでちょっと重く感じる人もいるかもしれない話が後半増える。
ストーリーは予想できない展開が多く、先が読めず楽しむことができたが、最後の最後は悪い意味で予想を裏切られた。ドラマ展開で個人的には女性好みという印象を受けたが、この辺は好みが分かれるところ。話数が足りなかった気がした駆け足な最後でしたが、話はまとまっていて清々しい終わり方です。
全体的に素晴らしい作品でした。特に素晴らしかったのはやはり冒頭にも触れた音楽!
音楽に詳しくない人でも音楽でケンカしたりしている様子が観ていて、聴いていて分かるくらい。特に学園祭のセッションシーンは3分以上ありましたが鳥肌ものでした。
独特の雰囲気を持った良いアニメです。ジャズが好きな人でも興味がない人でも観れば楽しめることと思います。
『C』 副題『THE MONEY OF SOUL AND POSSIBILITY CONTROL』【A+88】
『C』(シー) 副題『THE MONEY OF SOUL AND POSSIBILITY CONTROL』
おススメ 【A】
話数:全11話
今までに見た回数:3回
制作年:2011年4月 - 6月
ジャンル:SF・アクション
1. 設定(世界観) |
10 |
2. ストーリー展開 |
9 |
3. 登場人物設定 |
8 |
4. キャラデザイン |
10 |
5. 作画(背景/美術) |
9 |
6. 演出(アクション) |
7 |
7. 声優 |
8 |
8. 音楽(OP/ED) |
7 |
9. 音楽(BGM/劇伴) |
10 |
10. その他 メッセージ性 |
10 |
合計 |
88 |
ストーリー
『C』――それは未来を燃やす言葉。
西暦20XX年、日本――。 舞台は東京都国分寺市。
近未来の日本。密かに混じるミダスマネーによって日本経済は回復しつつあったが、その恩恵は国民に反映されず、不可思議な事件や自殺は次々と起こり、不安な時代が続いていた。
大学生・余賀公麿は、突然現れた金融街の使者・真坂木に「未来を担保に、ご融資させていただきます」と言われ、多額の金を銀行口座に振り込まれる。公麿はその金に何気なく手をつけるが、そこで公麿を待っていたのは金融街にて自身と周りの人々の未来を代償にしたミダスマネーの奪い合い『ディール』を強制される『アントレプレナー』としての道だった。
主人公・公麿の運命は大きく変わってゆく…。
――変わりゆく、世界。 買い戻せ、未来。
Wiki&[ C ]THE MONEY OF SOUL AND POSSIBILITY CONTROL@wikiより
2011年春のノイタミナ枠で放映されたアニメオリジナル作品になるのですが、この時期ここ連日でレビューした『魔法少女まどか☆マギカ』『シュタインズゲート』あたりに囲まれた放映時期で、かつ、『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。(以下:あの花)』と並んで放映と、名作達に囲まれて日が当たらなかった気がする『C』。
というのも人によっては難解な内容なうえに雰囲気も独特。『あの花』と並べば余計に「なんだこりゃ?」に見えるわけですが、もっと評価されるべき作品だと思っています。
実は連日の2011年のA評価アニメ連続レビューはこの話をするためです(笑)
話が脱線しましたが本題へ。
「金融」を学ぶというより「金」について考える
主人公「公麿」はバイトを掛け持ちしている大学生。ある日奇術師のような格好をした「真坂木」というミダス銀行の銀行員が現れ、「未来を担保に、ご融資させていただきます」と、多額の金を銀行口座に振り込まれるところから始まる。公麿はその金に何気なく手をつけてしまい、仮想空間のような世界「金融街」にて自身と周りの人々の未来を代償にしたミダスマネーの奪い合い「ディール」を強制され「アントレプレナー」としての道を歩み始めるところから始まる。
この「ディール」は自分の未来に関わる何かを形にしたパートナー「アセット」と共闘し、同じ立場のアントレプレナーとアセットと戦うことなのだが、作中ではディールのルールについてほとんど説明されないため置いてけぼりを喰らうかもしれない。
私は1話目にしてハマったので公式サイトをマメにチェックしており予備知識があったが、アニメだけだと詳細は不明なまま物語は進むことになる。
ディールのルールを簡単に説明すると、相手アントレプレナーに攻撃を当てると自分の利益、当てられると損益、制限時間内にどちらが多く相手の金を奪う(相手を攻撃する)か。また自身のアントレを守りながら攻撃も繰り出すのがアセットである。他にもアセットに「株」が存在しており、それを購入することが出来る。など結構内容が作りこまれていたりする。
しかし実はこの辺、最終的にはそれほど重要で無かったりするのでなんとなく雰囲気で観てしまっても正直問題は無い。必殺技の名前にM&A用語が出てきてそれっぽい内容の技になっていたりするが、これも厳密にはネタレベルなのでそこまで重要でもない。なので、ディールというバトル内容を観るにあたって特に金融の知識は必要ない。
というより知識ある人が観れば気になる点が多くでてしまいそうだ。
バトルの内容自体も複雑では無く、単純な勝ち負けを描写しているものが多い。
私としてはもっと戦略的なバトルが観たかったので正直物足りなかったが、そもそも1クールで描ききれないほどのテーマが隠れており、バトルの簡略化も含め11話完結なのが本当に惜しい。
正義も悪も無い
ストーリーに話を戻すと、ミダスマネー(金)が「未来を担保にしていることの意味」が見えだしてからは少しずつ姿を変えていく。未来を担保に戦うことで現在を守る・豊かにすることに繋がるのだが、守るものは人それぞれで、家族や生活、会社、現在を失わないように未来を失う覚悟のもと戦う(ディールする)話へ。
公麿は出会ったアントレプレナーたちの様々な考え方に触れ、悩み続けます。
終盤では「担保となった未来を失った人」から「国」へ話が移ります。日本にミダスマネーがどんどんと溢れ出し、日本で未来を失った人間が増え、目の前で子供が消え始めます。この辺の描写は非常にギリギリですが現実世界への警鐘にもみえます。実際のところ現在、国債で未来を担保にお金を作っているし、大きく受け取れば原発なども未来へ負担を委ねる形で今を支えている一つで、2011年の春というこの時期で、偶然とはいえ深い意味を感じさせる話が繰り広げられました。未来を担保にすることの意味をアニメなりに問いたいのかと思って観ると感慨深い。
そしてそこには2つの立場と考え方があり、「今を守る」ために「未来を担保」にする人間と「未来を守る」ために「今を犠牲」に戦う事に決めた人間のドラマがそこにはあり、それを彼らのアセットという形でも見せてくれるのだ。
「今」存在するアセットの「真朱(ましゅ)」と一緒の世界より、未来で出会うであろう人間の真朱を選んだ公麿の導いた結果は・・・。
【ネタバレ反転】
未来は残り、街には子供達が戻り、人々の表情は明るくなった。結局、大切なものは金では無かった。というところがこのアニメの結論だったのだろうか。
経済が衰退してもそこから過去何度もそうしてきたように復活できる。金は無くとも、人と、未来と可能性があればやって行ける。
今思えば一話の冒頭の「しょせん金は金か あるいはそれ以上のものか それともそれ以下のものか 立場が変われば見え方も変わる 不思議なものだな 金というものは」と言う三國のセリフ。これでいきなりハマッたのだが、これこそが『C』の、いや「金」の本質そのものだから、いやはやよく考えられた面白い話だった。
このアニメ、勧めた人から見終わった後によく質問があるのでまとめておきました。
最後まで観た人で疑問が多く残った人は私の解釈ですが参考に推測してみてください。
【最終話後に残る謎の解釈 ネタバレ反転】
・真朱の正体は何だったのか?
父親のアセットとそっくりだったということ、でいるはずだった妹の可能性もあるとは思いますが、公式サイトの「C」Monolouguesでは真坂木が「ある大学生はいずれ産まれるはずの娘か孫」と言っているので多分そういうことでしょう。
私には未来のどこかで公麿と真朱は出会うはずと、想像できる結末でした。
・キミマロと三国の写真はいつ撮った?
3話で竹田崎が撮っています。いい伏線でした。
・ジェニファーはなぜ笑っていた?
公麿が記憶を持っていることから、アントレプレナーは記憶を持ち越せると仮定すれば、予想していなかった公麿のまさかの勝利&輪転機の逆回転という結末に笑ったのかもしれません。
・公園の人は羽奈日じゃない?
真坂木が「かつて恋した人に似た人」と言っているので違う可能性が高そうです。家も表札から「生田」→「長田」になっていますし書き換えられた世界の別の誰か(違う羽奈日)と考えます。
未来の可能性は繋いだが、本来の今(今まで存在した今)を守れなかったということを言いたかったのかもしれません。
・なぜ「C」は日本を通過したのか?
日本の価値を暴落させ、ミダスマネーの価値を消失させたことで、金融街も影響力を失った結果通過したと思われます。
・なぜ未来を全て買い戻せたのか?
円の価値を0「ゼロ」にしたことで全て買い戻せたと思われます。未来を吸って金を作る輪転機が、逆回転し、金になった未来を吸い戻し未来を創り直したと考えるのがスッキリします。
・謎の人物は誰?
分かりません(笑) 「正解なんて無い、みんな正しいんだ。みんなが世界を良くしようと戦って、そして世界はより良くなった」 「どんな邪悪なものにも、どんな悲惨なものにも、かならず人類をより良くするための意味がある」ということをどうしても言いたかったのかと。
長くなりましたが、謎の多い先の読めないストーリー、金融をイメージした戦闘システム、国際金融を舞台にした壮大な設定(リーマンショックにひっかけたカリブ共和国の話は関心)、キャラクターデザインも描き分けができており、アセットのデザイン・設定もよくよく見ると奥深く、作画・演出もたまにキャラが3Dになることを除き満足、劇伴も最高に好みでした!
本音としては謎が多すぎるのでもう少し明確に、公式サイトを見ないと説明不足な部分をしっかり説明、他のキャラの掘り下げ、真朱とのイベント、簡略化された戦闘を作りこみ、2クールでじっくり観たかった。 2期もあれば観てみたい。優秀なアントレが揃う(?)アメリカとドルのミダスマネーの話でできますし、今回の結果金融街は消滅できなかったのであるから三國と同じ行動をとるかもしれない公麿を見てみたい。というか「真朱」をもう一度観たい(笑)
戦闘システムや、IFの話が多く想像できるこの世界観ならゲームもありかも。是非作ってほしい。というか企画させてください(笑)
本当にいいアニメだったと思います。うまく説明できた気がしませんが興味がでたら是非観てください。
『STEINS;GATE』【A+85】
『STEINS;GATE』(シュタインズ・ゲート)
おススメ 【A】
話数:全24話
今までに見た回数:2回
制作年:2011年4月 - 9月
ジャンル:SF・ミステリー
1. 設定(世界観) |
8 |
2. ストーリー展開 |
9 |
3. 登場人物設定 |
7 |
4. キャラデザイン |
8 |
5. 作画(背景/美術) |
9 |
6. 演出(アクション) |
9 |
7. 声優 |
8 |
8. 音楽(OP/ED) |
9 |
9. 音楽(BGM/劇伴) |
8 |
10. その他 鳳凰院凶真 |
10 |
合計 |
85 |
ストーリー
厨二病から抜け出せない大学生である岡部倫太郎は、「未来ガジェット研究所」を立ち上げ、用途不明の発明品を日々生み出していた。そして2010年7月28日、岡部は大学の単位取得のために橋田と共に向かった講義会場で、弱冠18歳でアメリカの科学誌に学術論文が掲載された天才少女、牧瀬紅莉栖と出会う。ところが、岡部はその数時間前にラジオ会館ビル(ラジ館)の8階奥で大量の血溜まりの中に倒れている紅莉栖を目撃し、そのことを橋田へ携帯メールで報告していたはずであった。偶然にも過去へとメールが送れる「タイムマシン」を作り出していたのだ。
世紀の発明と興奮を抑えきれずに、興味本位で過去への干渉を繰り返す。
その結果、世界を巻き込む大きな悲劇が、岡部たちに訪れることになるのだが…
悲劇を回避するために、岡部の孤独な戦いが始まる。
果たして彼は、運命を乗り越えることができるのか!?
Wiki&アニメデータベースより引用・加筆
ストーリーの概要を読んでも分かる通りシュタインズゲートは時間もののSFにあたり、話が難しく感じる人にはウケつけないかもしれないが是非最後まで読んでほしい。
この手のテーマには重要な「タイムパラドックス」という難問をどう魅せるか。と言う意味ではうまくできていたが、説明不足が多く、原作のゲームを未プレイ(私含む)の人間には理解できないまま進むことが多い。そのせいで序盤に視聴を切ってしまうことが多そうなのが非常に惜しい作品。
タイムパラドックスについて簡単に触れると、「過去に戻る理由」があり過去に戻り解決すると、「過去に戻る理由」は無くなってしまい、過去に戻らないのでは?という事と、そもそも「過去に戻る理由」があった未来が無かったのでは?ということが起こる。
この点を「平行世界」を組み合わせた考え方と、主人公の岡部が過去に干渉した際、干渉前の世界の記憶を留めることが出来るという設定でクリアし、変化を伴った世界を岡部の視点で見せている本作。
このシュタインズゲートの惜しいところは第一話の段階で、この重要なポイントのSF的な要素が見えないことで、初視聴時は1話終了時に「ん?どういうこと?」という気持ちが残った。数話進んだ後に見返せばすぐに理解できたのだが・・・。
そしてもう一つ、登場人物の設定に特徴があり、岡部やその仲間「ダル」たちがいわゆるアキバ系な会話をするのだが、そっちが濃いせいで原作を未プレイの人はこれが続きを観るかどうかの大きな判断基準になってしまいそう。ここで簡単にああ、こういうしゃべり方無理 !では勿体ない。
始まって早々突っ込みどころの多い展開が目立ち続けるが、「Dメール」で過去への干渉に成功してからは物語が大きく動き始める。私はここから一気にハマった。繰り返し1話から見直したら、意味が分かっていて観ると最初から面白いのだ。
「少しの文字情報」による干渉が大きく変える世界。これは現実私たちの世界でも「たった一言」で違った結果があったかもしれないことも示唆しているようで私は非常に奥深さも感じる。
たった一通のメールで街そのものが変わったり、誰かの人生を変えてしまう。そして岡部(と視聴者)だけが認識しながら話が進むのだが、何度も悲劇を繰り返すことになる。
特に終盤の展開はハラハラしながら観ることができ、続きがここまで楽しみなアニメは珍しい。
終盤の具体的な話だが【ネタバレ反転】
どの並行世界でも避けられない仲間「まゆり」の死。何度もそれを見続け、苦痛と同時に麻痺していく恐ろしさ。
岡部の厨二だけではない本当の魅力と苦悩が徐々に視聴者(ある意味同じ観測者)に伝わってくる。そして「クリス」との展開。
そして最後の「世界線」への到達時にはこれがタイムパラドックスやSFがテーマで興味を示したはずなのに、SF要素の不明点や崩れ(Dメールをキャンセルしていって本当に元の世界線に戻れているのか?クリスはなぜ記憶を残せたか?)が気にならなくなっていて、軸がSF部分から岡部の愛に変わっていたことに気づく。
何よりもあれだけ違和感のある変なやつだと思っていたキャラ達にいつの間にかどっぷり感情移入できた(させていた)ことには驚きだ。
終盤は展開が楽しみで面白いというと前半はそうでなかったような語弊があるので追記しておくと、この作品は前半にもポイントがある。前半の何とも例えにくい、怪しさ、演出、秋葉原の街並みなどの繰り返しが、後に意味を成しており、この世界観や空気感のおかげで気づかないうちに思いがけないところにハマっているのだ。
原作未プレイだと退屈な前半に感じるのは物語の設定上仕方がないが、毎回同じように時間を戻して過去を変えていく、という単調な一面は、ストーリー構成をもう少しうまくできたような気がしないでもない。しかし最後まで観てからもう一度見直してみると前半も別の見方ができて面白いので評価がし辛い。
SF要素だけに期待してみると腑に落ちないところは多々あるため正直評価は分かれるところだが、最初は退屈しても最後まで観ていただきたい。
できれば少しタイムパラドックスやタイムトラベルあたりの知識をかじって観るとなお面白いはず。
好みは分かれる作品ですが私はおススメの作品です。
エル・プサイ・コングルゥ
『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』【A-80】
『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』(あのひみたはなのなまえをぼくたちはまだしらない。)
おススメ 【A】
話数:全11話
今までに見た回数:2回
制作年:2011年4月 - 6月
ジャンル:青春
1. 設定(世界観) |
6 |
2. ストーリー展開 |
6 |
3. 登場人物設定 |
6 |
4. キャラデザイン |
8 |
5. 作画(背景/美術) |
10 |
6. 演出(アクション) |
9 |
7. 声優 |
8 |
8. 音楽(OP/ED) |
10 |
9. 音楽(BGM/劇伴) |
8 |
10. その他 泣かす!!! |
10 |
合計 |
80 |
ストーリー
幼い頃は仲が良かった宿海仁太、本間芽衣子、安城鳴子、松雪集、鶴見知利子、久川鉄道ら6人の幼馴染たちは、かつては互いをあだ名で呼び合い、「超平和バスターズ」という名のグループを結成し、秘密基地に集まって遊ぶ間柄だった。しかし突然の芽衣子の死をきっかけに、彼らの間には距離が生まれてしまい、それぞれ芽衣子に対する後悔や未練や負い目を抱えつつも、高校進学後の現在では疎遠な関係となっていた。
高校受験に失敗し、引きこもり気味の生活を送っていた仁太。そんな彼の元にある日、死んだはずの芽衣子が現れ、彼女から「お願いを叶えて欲しい」と頼まれる。芽衣子の姿は仁太以外の人間には見えず、当初はこれを幻覚であると思おうとする仁太であったが、その存在を無視することはできず、困惑しつつも芽衣子の願いを探っていくことになる。それをきっかけに、それぞれ別の生活を送っていた6人は再び集まり始める。
Wikiより
アニメオリジナル作品であり、1クールでうまくまとまった構成は評価が高い。
幼馴染の死という過去を抱えた若者たちの淡い恋や罪の意識、絆や成長がテーマで、ストーリーの展開に従って複雑化していく人間関係なども描かれる。死んだはずの幼馴染であるヒロイン「本間芽衣子:めんま」が幽霊として主人公「宿海仁太:じんたん」の前に現れるというところはファンタジーだが、足が無いとか、壁をすり抜けられるとかそういったよくある幽霊のような描写は特別避けられている。ただ、生きた人間と変わらず振る舞う姿を描写しながらも、その姿が鏡に映らなかったり、じんたん以外にはその姿が見えていないことを示すことで、彼女が霊的な存在であることを描写しているのが特徴。
ストーリーは幼い頃は仲が良かった6人の幼馴染たちが、突然の「芽衣子:めんま」の死をきっかけに、10年後の現在では疎遠な関係となっている。その一人学校に行かなくなった「引きこもり」主人公「じんたん」の前に小学校の頃事故で亡くなった「めんま」が現れ、彼女から「お願いを叶えて欲しい」と頼まれる。めんまの「願い」をきっかけに動き出すじんたん。引きこもりの彼が昔の友達と接触を取り始め、疎遠な関係だった皆の距離感が徐々に狭まっていく。
というものなのだが、10年経てば疎遠になることはよくあることで、小学生の頃の友達と高校生になって連絡を取っていることは殆ど無かった人が多いはず。この設定は私も含め20代以上の多くの人が共感できそうでよくできている。
そして特に1話の出来は素晴らしく、あっという間に引き込まれた。演出も心情描写とうまく結びついており非常にうまい。とくに1話最後のEDの挿入は完璧なタイミングで、ZONEの「secret base 君がくれたもの」(声優リメイク)が流れる。10年前の曲が流れた瞬間、視聴者の心に浮かぶ10年前・青春の記憶にいきなり触れてくるような演出で、この連鎖は涙を誘う。本当に関心した。
全体的によくできている作品なのだが、私が「気になった」という箇所をあえて触れておきたい。そこが気になったせいで客観的な視点に戻され、のめりこめなかった部分である。
【ネタバレ反転】
後半で「めんま」が存在を証明するために筆談をしだすのだが、なぜ早い段階でそれができなかったのか?最初から物に触れていたのだから、じんたんがめんまの存在を証明できずにいたときそうしなかった理由がいまいち分からない。
あと賛否両論あるのだが最終話で、今までじんたんにしか見えてなかった「めんま」の姿がお別れのときだけ皆に見えるようになったこと。(これは解釈の仕方でいくらでも解決できるが…)
上記2点は好みの問題でもあるのだが、私はめんまの幽霊としての「存在」が不確定であることに魅力を感じていた(じんたんの想像上の可能性)から彼女が他に人間に存在を証明する部分は感動と同時に少し残念でもあったりした。
勢いにまかせた終盤でごまかされた感はあったが、全体的な完成度は高かった。放送中に毎週観ていたが一度に観た方が勢いよく上記の様な疑問を感じず楽しめることは間違いない。
「泣き場」を意識した作りになっている展開なので、ストーリーは一話の時点で大方予想がつくが、一度に観ればこれも関係ないと思われる。
人によってはここから「泣き場」です!と押し付けを感じる人もいるかもしれない。でも、わかっていても涙できるはず。それだけ演出や声優さん、音楽もレベルが高い。
登場人物に関しては心情描写が丁寧な一方、主要人物が多いこともあり、1クールでは描ききれなかった点があった気はする。また、セリフが多くなり、終盤は貴重な空気感(間とか溜め)が薄くなり駆け抜けたとこは少し残念。しかし序盤の演出による空気感が素晴らしかったので、「あえて言うなら」というレベルだが。
個人的にはメンバーを一部統合または省略し、厳選したシナリオで2時間半くらいにまとめた映画版を観てみたい。
と思っていたら少し違いますが、めんま視点の劇場版が来年夏にできるみたいですね。
(C)ANOHANA PROJECT
ストーリーや設定で気になる点もありましたが、全体的にすばらしい造りでそれ以上に楽しませてくれます。
皆様におすすめできるアニメです。
『魔法少女まどか☆マギカ』【A+85】
『魔法少女まどか☆マギカ』(まほうしょうじょまどかマギカ、PUELLA MAGI MADOKA MAGICA)
おススメ 【A】
話数:全12話
今までに見た回数:2回
制作年:2011年1月6日 - 2011年4月21日(放送休止期間あり※本文に記載)
ジャンル:ファンタジー・SF
1. 設定(世界観) |
7 |
2. ストーリー展開 |
10 |
3. 登場人物設定 |
7 |
4. キャラデザイン |
7 |
5. 作画(背景/美術) |
9 |
6. 演出(アクション) |
8 |
7. 声優 |
8 |
8. 音楽(OP/ED) |
10 |
9. 音楽(BGM/劇伴) |
9 |
10. その他 1人じゃない! |
10 |
合計 |
85 |
ストーリー
2011年の世界を舞台に、願いを叶えた代償として「魔法少女」となり、人知れず人類の敵と戦うことになった少女たちに降りかかる過酷な運命を、優れた魔法少女となれる可能性を持ちながらも傍観者として関わることになった中学生・鹿目まどかを中心に描く。
Wikiより
放送期間中に震災の影響をうけ、最終回の放送が1か月延期されたりと、結果的には「近年最大の話題性」なった2011年の代表アニメ。『新世紀エヴァンゲリオン』以来の社会現象とまで言われ、テレビアニメが原作となりマンガや小説、ゲーム化、映画化も予定。
基本ストーリーは魔法少女モノ。平和な生活をおくる女子学生「まどか」の元に、夢で見た少女が転校してくるとこから話は始まる。そして突如と現れたぬいぐるみのようなマスコット的キャラ「QB(キュウベイ)」を助けたことでまどかは魔法少女の世界に巻き込まれていく。
私は放送当時1話視聴後、それほど期待を持てなかったのでそのまま溜め撮りし、しばらく間を空けてしまいました。というのも1話目はよくある魔法少女ものにしか見えなかったからで、マスコットキャラクター的なものや、ポップなタッチのデザイン。そういうアニメなのかな~と安易に判断してしまいました(笑)
しかしこの作品、3話にて突然姿を変えてきます。(これから観る方は3話まで観てから判断推奨です)
あちこちですでにネタバレしまくっているので伏せる必要は無いかと思うのですが、いやはや3話からの展開に驚かされました。今までの空気感はここで一気に落とすための仕込みだったわけですね。
ここからはもう続きが気になって止まらなかった。最初に可愛さを前面に出し、油断させておきながらの世界観の雰囲気の破壊。始まる「契約」の誘惑。ストーリーの流れが非常にうまい。
登場人物も誰をとっても素晴らしい。まどかの友人「さやか」も好き嫌いは分かれているが私は一番人間臭くて好きである。この作品の重要なメッセージ性は彼女にも大きくあり、雰囲気破壊後のQBの黒さは彼女によって発揮される。
かわいい顔で、魔法少女の宿命や設定、仕組みなどを後から説明するQB。え?確認しないのが悪いでしょ?と言うようにさやかを危険な世界に引きずり込む。
その仕組みというのが、どんな奇跡や願いでも叶える代わりに契約した少女はソウルジェムを手にし魔法少女として魔女と戦わねばならないというものなのだが、後出しで、魔法少女は戦えば戦うほどグリーフシードが曇っていく、魔女を倒せばグリーフシードを浄化できるが、グリーフシードが完全に濁ると自分が魔女になってしまう。と後から判明していく。何よりも魔女を倒すためには魔法少女が必要になるという永久の連鎖が生まれておりこれが全ての元凶という設定である。
まるで現実世界でいう薬物等の危険な世界への甘い誘惑。また中学生という精神が不安定な時期に本当に騙されないでいられるか。先のことなんか考えられずに動いてしまったり、人に流されてしまったり。友達や先輩がやっているなら大丈夫。となる気持ちも不自然ではない。
そして途中から登場した「杏子」も物語への必要性が大きかった。
足を踏み入れてしまったが最後、引き返せない世界で、さやかは誰にも頼ることができずにいるが、同じ道を歩む杏子に出会う。
【ネタバレ反転】
ともに不幸な最後へと向かうのだが、これも現実世界でいう危険な世界へ踏み込んだ最悪の結末の象徴にみえてしまった。
そしてまどかは魔法少女になるのか?
さやかのことで思い悩むまどかに最初からずっと踏みとどまるように説得し続けた「ほむら」のこれまでの謎が明かされ、主人公まどかの意味を同時に深めてみせる。なぜまどかが主人公たりえたのかが最終話目前で明確になるのだが、これがたった1話でやってのけられるのは素晴らしかった。
ただ最終話の結末には意見が分かれそうだ。
【ネタバレ反転】
最終回でまどかが魔女化システムを消滅させるのだが、QBの話を解釈すると、戦い続けた結果の魔女化が無くなっただけで、祈りと呪いのバランスは変化していない。
結局魔法少女システムは存在し、魔女に代わり魔獣が誕生。魔獣と戦うことでも呪いが貯まり、最終的には魔女にはならないが消滅してしまう。呪いの結末の姿が変わっただけである。
呪いの行方は変わったおかげで同士の敵に自分がなることは無くなったが、中盤からのメッセージである「甘い話には気を付けろ!」においてはそのままである。まぁ脚本家の虚淵玄さんらしいといえばそうだが不満の残る人も多そうだ。
とは言ったものの完全なるハッピーエンドだと陳腐なものに成り下がる可能性もあるので私の意見としては非常によくできた終わりかただったと思う。
ストーリーとキャラの話が長くなったが、バトルシーンなども斬新。特長がありすぎて好みがわかれるところだがこの辺は作風を含め、独特の演出がアニメオリジナル作品ならではとなっており非常に良い。
劇伴も素晴らしい出来で神秘的な雰囲気が話を盛り上げる。主題歌も完成度が高く、アニソンとしてというよりも一つの曲としても申し分無い魅力。
気になる点で言えば、多少キャラクターの作画の面でひどい表情のものが目立ったこと。
他には強いて言うならタイトルだろうか。まどかの名前があるのに最終話までまどかが活躍しない。友人曰くこれは「ほむらマギカ」だという意見もあった。いやしかし改めて考えてみると最終話を考えればやはり文句は無い。最後にはちゃんとまどかなのだから。
この作品は思春期の女の子をとりまく危険な誘惑を魔法少女という設定で表現したものかもしれない。ストーリーの全話がどれも必要な話でかつ、目を離せない展開で素晴らしい。魔法少女のシステム設定や登場キャラの厨二、デザインに嫌いが無ければ楽しめるはずですので是非観てください。